[ブログvol.7] FTIRによるガス測定、ガスモニタリング測定について
気体中の成分濃度を測定する方法はさまざまですが、その中でもFTIR(フーリエ変換赤外分光法)は、多成分同時測定ができる優れた分析法として利用されています。CO₂、CH₄、NOₓなどの環境ガスから、工場の排ガス、さらには呼気成分の分析まで、さまざまな場面で活用されています。
この記事では、FTIRによるガス測定の仕組み(原理)、代表的な応用例、そして他の測定法との違いや利点を、図やスペクトルとともにわかりやすく解説します。
FTIRの測定原理:赤外線と分子の振動
分子は、ばねのように原子がつながっており、伸びたり縮んだり、ねじれたりします。これが分子振動と呼ばれる動きです。この振動は波長ごとに異なります。これを固有振動数(波長)とよびますが、赤外線が分子に当たると、固有振動数に適応する波長の光だけが吸収され、残りは透過します。FTIRでは、マイケルソン干渉計を使って、さまざまな波長の赤外光を干渉波として同時に試料に当てます。その後、得られた信号(干渉パターン)をフーリエ変換することにより、各波長ごとの吸収スペクトルを一気に得ることができます。この方法により、短時間で広い波長範囲の情報(複数の成分を含む情報)を同時に取得できるのがFTIRの特徴です。

図1:ガス赤外スペクトル例(CO2、メタン、アンモニア、NO2、NO)
ガス測定におけるFTIRの特徴 ガスセルの構造
ガスを測定するには、ガスを閉じ込めるセル(気体セル)が必要です。以下のような構造があります:
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ミラーレス直線型セル(光路長数cm)
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多重反射型セル(最大100m程度の光路長)
光路長は吸収強度と比例するため、長い光路をとることにより、微量なガスでも吸収が明確に現れます。

図2:多重反射型ガスセル(出典:エスティジャパン、システムズエンジニアリング)
FTIRによる代表的なガス分析の応用例
1. 大気汚染物質のモニタリング
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CO₂、N₂O、CH₄など(温室効果ガス)
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NOx(酸性雨の原因)
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酸化エチレン(発がん性)
FTIRは複数のガスを同時にリアルタイム分析できるため、大気監視装置として活用されています。
2. 工場の排ガス測定、工業ガス測定
ボイラー、焼却炉などから出る排ガス中の有害物質(CO、HCl、NH₃、HCl、炭化水素類など)の連続モニタリングに使われています。法律に基づく連続排出監視(CEMS)にも対応可能。フッ素系ガス、半導体ガス、CO2中の不純物ガス分析にも最適。
3. 自動車や燃焼実験のガス分析
エンジンテストベンチや燃焼研究において、NOx、SOxなどの燃焼生成物の変化を時間分解能高く追跡できます。アンモニア燃焼におけるNOx測定などにも応用されます。
4. 医療用途
人の呼気に含まれるアセトン、CO、NOなどのガスを測定することで、糖尿病や炎症の指標を非侵襲で得る研究も進んでいます。
代表的なガス測定法との比較とFTIRの利点

欠点や注意点
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感度:FTIRで測定できる濃度は概ねppm以上が必要(機器や仕様により数ppbレベルの測定も可能)
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水蒸気やCO₂などの干渉吸収に注意が必要
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ガスセルの材質・温度・圧力によって測定結果が変動する
- 測定濃度範囲、ガスの反応性によってガスセルの材質、光路長など選定が必要
5. 低濃度測定用ガスモニタリングFTIR

まとめ
FTIRは、「分子の赤外吸収特性」を活用することで、ガスをリアルタイムかつ多成分同時に測定できる強力なツールです。
他のガス測定法に比べて、非破壊・簡便・多用途であるため、環境分析から工業プロセス、医療分野まで幅広く活躍されています。