2026.02.06

[ブログvol.7] FTIRによるガス測定、ガスモニタリング測定について

気体中の成分濃度を測定する方法はさまざまですが、その中でもFTIR(フーリエ変換赤外分光法)は、多成分同時測定ができる優れた分析法として利用されています。CO₂、CH₄、NOₓなどの環境ガスから、工場の排ガス、さらには呼気成分の分析まで、さまざまな場面で活用されています。

この記事では、FTIRによるガス測定の仕組み(原理)、代表的な応用例、そして他の測定法との違いや利点を、図やスペクトルとともにわかりやすく解説します。


FTIRの測定原理:赤外線と分子の振動

分子は、ばねのように原子がつながっており、伸びたり縮んだり、ねじれたりします。これが分子振動と呼ばれる動きです。この振動は波長ごとに異なります。これを固有振動数(波長)とよびますが、赤外線が分子に当たると、固有振動数に適応する波長の光だけが吸収され、残りは透過します。FTIRでは、マイケルソン干渉計を使って、さまざまな波長の赤外光を干渉波として同時に試料に当てます。その後、得られた信号(干渉パターン)をフーリエ変換することにより、各波長ごとの吸収スペクトルを一気に得ることができます。この方法により、短時間で広い波長範囲の情報(複数の成分を含む情報)を同時に取得できるのがFTIRの特徴です。

 

図1:ガス赤外スペクトル例(CO2、メタン、アンモニア、NO2、NO)


ガス測定におけるFTIRの特徴 ガスセルの構造

ガスを測定するには、ガスを閉じ込めるセル(気体セル)が必要です。以下のような構造があります:

  • ミラーレス直線型セル(光路長数cm)

  • 多重反射型セル(最大100m程度の光路長)

光路長は吸収強度と比例するため、長い光路をとることにより、微量なガスでも吸収が明確に現れます。

図2:多重反射型ガスセル(出典:エスティジャパン、システムズエンジニアリング)


FTIRによる代表的なガス分析の応用例

 

1. 大気汚染物質のモニタリング

  • CO₂、N₂O、CH₄など(温室効果ガス)

  • NOx(酸性雨の原因)

  • 酸化エチレン(発がん性)

    FTIRは複数のガスを同時にリアルタイム分析できるため、大気監視装置として活用されています。

2. 工場の排ガス測定、工業ガス測定

ボイラー、焼却炉などから出る排ガス中の有害物質(CO、HCl、NH₃、HCl、炭化水素類など)の連続モニタリングに使われています。法律に基づく連続排出監視(CEMS)にも対応可能。フッ素系ガス、半導体ガス、CO2中の不純物ガス分析にも最適。

 

3. 自動車や燃焼実験のガス分析

エンジンテストベンチや燃焼研究において、NOx、SOxなどの燃焼生成物の変化を時間分解能高く追跡できます。アンモニア燃焼におけるNOx測定などにも応用されます。

 

4. 医療用途

人の呼気に含まれるアセトン、CO、NOなどのガスを測定することで、糖尿病や炎症の指標を非侵襲で得る研究も進んでいます。

 


代表的なガス測定法との比較とFTIRの利点

 

 

欠点や注意点

  • 感度:FTIRで測定できる濃度は概ねppm以上が必要(機器や仕様により数ppbレベルの測定も可能)

  • 水蒸気やCO₂などの干渉吸収に注意が必要

  • ガスセルの材質・温度・圧力によって測定結果が変動する

  • 測定濃度範囲、ガスの反応性によってガスセルの材質、光路長など選定が必要

 

5. 低濃度測定用ガスモニタリングFTIR

最近では、「MAX-iR FTIRガスアナライザー」を代表とする、ppbレベル以下から%オーダーまでのリアルタイムガスモニタリングを可能とした装置も販売されています。触媒評価や燃焼ガスのインラインプロセスから純ガス中の微量不純物測定などで活躍しています。MAX-iRは9.86mの長光路ガスセルと、非常に安定した光学系、干渉除去アルゴリズムを搭載し、多彩な応用分野においてFTIRによる微量ガスモニタリングを可能とします。
 
製品紹介ページ:
 
 

 

まとめ

FTIRは、「分子の赤外吸収特性」を活用することで、ガスをリアルタイムかつ多成分同時に測定できる強力なツールです。

他のガス測定法に比べて、非破壊・簡便・多用途であるため、環境分析から工業プロセス、医療分野まで幅広く活躍されています。

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