ACADEMIC REFERENCES

論文データベース

当社がピックアップした各種アプリケーションや材料評価などで役立つ国内・海外の論文を逐次紹介しています。
みなさまのお仕事に参考になれば幸いです。
*ここで紹介されている論文やその要約は当社が分野・内容ごとに独自にまとめたものです。
内容・詳細につきましてはオリジナルの対象論文をご参照ください。

Following domestic and international academic papers selected by our company that are useful for various applications and material evaluations.
We hope these will be helpful references for your daily analysis work.
*Those academic papers and their summaries introduced here are compiled independently by our company according to field and content. 
For content and details, please refer to the original papers.

  • SO2- and NOx- initiated atmospheric degradation of polymeric films: Morphological and chemical changes, influence of relative humidity and inorganic pigments

    現代の有機系塗膜(アクリル系・アルキド系など)をSO₂およびNOx雰囲気で曝露し、劣化を3D顕微鏡とATR-FTIRマッピングで解析した研究です。ATR-FTIRからはカルボニル・エーテル・硫酸塩などのバンド変化を捉え、相対湿度や顔料種による劣化機構の違いを多変量解析(PCA, ASCA)で定量評価しています。SO₂による加水分解・酸化がポリマー主鎖や架橋構造に与える影響をスペクトルで可視化しており、硫黄酸化物環境での樹脂フィルム表面の化学劣化評価にFTIRをフル活用した例といえます。

    Laura Pagnin, Rosalba Calvini , Rita Wiesinger , Manfred Schreiner

    SOx, NOx ,高分子,FTIR

  • Improving the Dyeing of Polypropylene by Surface Fluorination

    PPフィルムを25℃・10–380 TorrのF₂ガスで1時間処理し、表面フッ素化による染色性向上を検討した研究です。FTIRでは未処理PPのC–H伸縮(2960, 2919, 2867 cm⁻¹など)の減少と、新たなCF, CF₂, CF₃バンド(700–770, 1000–1200 cm⁻¹)の出現を確認し、フッ素化層が形成されることが示されています。F₂の圧力が高いほどフッ素化バンドが増大し、CH由来ピークは消失に近づいています。AFMと合わせ、表面組成・厚み方向の変化をFTIRで定量化したフッ素ガスによる樹脂表面改質例です。

    Masanari Namie,Jae-Ho Kim,Susumu Yonezawa

    フッ素,高分子,FTIR

  • Study on ammonia transport and separation in Aquivion® perfluoro sulfonated acid membranes

    短側鎖型ペルフルオロスルホン酸膜(Aquivion C87-05)中のアンモニア輸送と分離性能を調べた研究です。純NH₃/N₂/H₂透過試験後の膜をFTIRで測定し、NH₃残存や膜骨格への影響を解析しています。FTIRではスルホン酸基近傍のバンド変化から、NH₃のプロトン化・脱プロトン化や水和状態の変化を推定し、これが輸送挙動・選択性と対応することを示しています。樹脂の分解というよりは、アンモニアとの相互作用による局所構造変化の評価例です。

    Virginia Signorini, Aysegul Askin,Claudio Oldani, Matteo Minelli, Marco Giacinti Baschetti

    アンモニア,高分子,FTIR

  • Investigation on the Ammonia Sensitivity Mechanism of Conducting Polymer Polypyrroles Using In-Situ FT-IR

    導電性ポリマーPPy薄膜のNH₃ガスセンサとしての応答機構を、リアルタイムin-situ FTIRで追跡した研究です。NH₃導入時にC=C/C–N伸縮やドーピング関連バンドが変化し、ポリピロール骨格のプロトン化状態が時間とともに変化する様子をスペクトルから解析しています。これにより、NH₃吸着に伴う構造変換と電気抵抗変化の相関を示し、アンモニア環境下での高分子骨格の可逆的化学変化をFTIRで詳細に評価しています。

    Ling Wang, Renzhi Jiang

    アンモニア,高分子,FTIR

  • Increased Cu(II) Adsorption Onto UV-Aged Polyethylene, Polypropylene, and Polyethylene Terephthalate Microplastic Particles in Seawater

    PE/PP/PETマイクロプラスチックを海水中で12か月UV老化させ、Cu(II)吸着能の変化を評価した研究です。FTIRスペクトルから、老化に伴いカルボニルなど酸化官能基が増加し、表面の極性・官能基密度が上昇したことを確認しています。それに伴いCu(II)吸着量は1.45〜2.92倍まで増加し、特に粒径が小さい粒子ほど影響が大きいことが示されています。塩水環境+光老化の組み合わせが、表面化学と吸着挙動を強く変えることをFTIRで定量的に裏付けています。

    Xiaoxin Han,Rolf D. Vogt, Jiaying Zhou, Boyang Zheng,Xue Yu, Jianfeng Feng, Xueqiang Lu

    高分子 マイクロプラスチック FTIR

  • The effect of weathering environments on microplastic chemical identification with Raman and IR spectroscopy: Part I. polyethylene and polypropylene

    PEおよびPPのマイクロプラスチックを、空気・純水・人工海水・実海水(Puget Sound)の4条件で最大26週間人工風化させ、IR(ATR-FTIR)とラマン分光で化学状態を評価した研究です。風化環境によりカルボニル指数などIRスペクトルの変化パターンが異なり、分解経路の違いが示唆されています。一方でラマンスペクトルは比較的類似しているが、結晶性/非晶質領域に対応するピーク強度変化から、配向・結晶化度の変化を読み取れることを示し、風化でIRマッチングが困難な場合にラマンが有効であると結論付けています。

    Samantha Phan , Jacqueline L. Padilla-Gamiño, Christine K. Luscombe

    高分子 マイクロプラスチック FTIR ラマン

  • Second Generation of Multiple-Ang le Incidence Resolution Spectrome try

    従来のFT-IR MAIRS法の課題であった水蒸気による干渉ピークや干渉縞(フリンジ)を除去すべく、改良版となる「MAIRS2」を開発した。MAIRS2では入射角を大角度に固定し代わりに偏光角を変化させる手法を取り、これによりセル内の水蒸気吸収の重畳を大幅に低減。さらに最適化された補正アルゴリズムにより光学的フリンジも効果的に除去した。実際に種々の薄膜でIP/OPスペクトルを取得した結果、水分や薄膜干渉の影響なく高精度な配向スペクトルが得られることを示し、MAIRS2は従来法の問題を克服した新たな強力な薄膜構造解析ツールであると報告している。

    Nobutaka SHioya; Kazutaka Tomita, Takafumi Shimoa, Takeshi Hasegawa

    MAIRS 薄膜 配向

  • A new schematic for poly(3-alkylthiophene) in an amorphous film studied using a novel structural index in infrared spectroscopy

    この論文は、アモルファスなpoly(3-alkylthiophene)(P3AT)薄膜において、チオフェン環の「短軸は基板に平行だが、鎖方向は大きく乱れている」という新しい構造像を提案しています。ここで鍵になるのが、pMAIRSと「構造インデックス」を組み合わせた配向解析です。チオフェン環上の3つの互いに直交する振動モードに着目し、それぞれのIP/OP吸収から配向角を求め、さらに新規に定義した構造インデックスで整理することで、結晶化度に依存しない“平均的なリング配向”を描き出しています。つまりMAIRSは、(1) 面内/面外スペクトルの分離による配向角の算出、(2) それを複数モードで組み合わせることで、アモルファス膜でも半経験的な「構造パラメータ」として配向を数値化する評価軸として使われています。

    N. Shioya, T. Shimoaka, K. Edab, T. Hasegawa

    MAIRS 薄膜 配向

  • Collective orientation barrier in growth of organic thin films revealed by pMAIRS

    この論文は、有機半導体ペンタセン薄膜の成長過程で、「分子が寝た状態から立った状態へ向きを変えるための集団的なエネルギー障壁(Collective Orientation Barrier, COB)」を定量化した研究です。pMAIRSを用いて、成長温度を変えたときの薄膜中の“lying vs standing”分子の比率を、アニソトロピックな赤外吸収(IP/OPスペクトル)から評価します。その比率から“立ち配向をとる確率”を定義し、温度に対するArrheniusプロットを作ることで、COBを約0.02 eVと見積もっています。ここでのpMAIRSの役割は、薄膜内の平均配向角を知るだけでなく、「その配向状態がどれだけ熱活性化されたプロセスの結果なのか」をエネルギーパラメータとして引き出す評価法になっている点です。この定量的COB評価は、他の有機半導体薄膜で成長条件と分子配向を設計する際の指標として応用可能とされています。

    Sae Nagai , Yuta Inaba, Toshio Nishi, Hajime Kobayashi, Shigetaka Tomiya

    MAIRS 薄膜 配向

  • Conformation change of α-synuclein(61-95) at the air-water interface and quantitative measurement of the tilt angle of the axis of its α-helix by multiple angle incidence resolution spectroscopy

    パーキンソン病に関与するα-synucleinのNAC領域が、水溶液中ではランダム構造だが、空気/水界面ではαヘリックスへと構造転移する様子を調べた論文です。Langmuir単分子膜を作り、CDで二次構造変化を見つつ、p偏光MAIRS(pMAIRS)で界面に対するヘリックス軸の傾き角を定量しています。具体的には、アミドIバンドの面内(IP)・面外(OP)の吸収強度からヘリックスの遷移モーメントの傾き角を算出し、「膜に対してどれくらい傾いているαヘリックスなのか」を角度として評価しています。従来のATRやIR-RAでは測定が難しい“モノレイヤー+傾き角”という情報を、pMAIRSだけで引き出していて、膜タンパク質の構造解析に対するX線・NMRの補完技術としてのポテンシャルを示した内容です。

    Chengshan Wang, Shiv Kumar Sharma, Oladimeji Sunday Olaluwoye , Saad Ayidh Alrashdi , Takeshi Hasegawa, Roger M. Leblanc

    MAIRS 薄膜 配向