CATEGORY
-
Analysis of Cellulose and Lignocellulose Materials by Raman Spectroscopy: A Review of the Current Status
セルロースおよびリグノセルロース材料へのラマン分光応用を総括したレビューです。セルロースⅠとⅡ、多形や無秩序相のラマンバンド割り当てが整理されており、特に結晶度指標となるバンド(例えば93 cm⁻¹格子振動や380 cm⁻¹、1481 cm⁻¹のバンド)に基づく結晶化度(CrI)評価法が詳述されています。またセルロース分子鎖のCH₂OH基配向(tg対gt配座)によるラマン強度比(1480/1460 cm⁻¹)の変化や、水素結合状態の違いを反映するピークシフトなど、ラマンにより得られるセルロース高次構造情報について最新知見が紹介されています。
セルロース ラマン スペクトル解析
-
IR spectroscopy in catalysis
ヘテロ触媒研究における赤外分光技術の展開を包括的にレビューした長大な論文(引用文献数約600)です。透過、拡散反射(DRIFTS)、ATR、光音響といったIR測定モード別に装置やセルの設計、COやNOなど吸着分子の赤外スペクトルから得られる表面サイト情報の解釈を詳述されています。特に金属表面に化学吸着したCOの赤外吸収(線形、一酸化炭素のブリッジ結合による帯など)から粒子表面の結晶面指数やサイト数を評価する手法、およびリアルタイム反応追跡へのIR応用(時間分解FT-IRや原位セル)がまとめられています。
FTIR 触媒 赤外スペクトル
-
Infrared spectroscopy at the surface of carbonates
炭酸カルシウムなど炭酸塩の表面化学を赤外分光で調べたショートレビューです。カルサイト、アラゴナイト、バテライト等の結晶多形の構造を近赤外~中赤外までの吸収帯で特徴づけ、吸着したCO₂や水などの分子種による表面吸着種の赤外バンドも解析しています。特に炭酸イオンの基準振動(対称伸縮、変角振動等)の波数範囲を整理し、表面に吸着した重炭酸種のO–H伸縮振動が2400–3000 cm⁻¹付近に現れることなど、環境・工業プロセスに関連する知見を提供しています。
FTIR 炭酸塩 炭酸カルシウム 赤外スペクトル解析
-
顕微赤外分光法による高分子とフィラー界面構造の可視化
ガラス繊維やタルク等の無機フィラーを含むポリマー複合材料において、マトリックス‐フィラー界面の構造を赤外顕微鏡と二次元相関分光法で解析した総説です。界面での相互作用や化学結合の形成を赤外スペクトルの変化から可視化する手法について包括的に概説されています。
高分子 FTIR 赤外顕微鏡 フィラー
-
A Raman spectral reference library of potential anthropogenic and biological ocean polymers
海洋中のプラスチック汚染研究向けに主要ポリマーのラマンスペクトル高品質データベースを構築したオープンアクセス論文です。40種の新品ポリマー、22種の海洋劣化ポリマー、17種の生物由来ポリマーの広帯域ラマンスペクトルを収録し、各ポリマーの指紋的ピークによる確実な同定を支援しています。ラマン分光の精度で微小プラスチックの種類推定が向上することが示されています。
高分子 ラマン 判別 マイクロプラスチック
-
赤外線吸収スペクトルによる合成高分子化合物の系統的鑑別法
関税中央分析所による総説。Kagarise法に基づき、赤外スペクトルの特徴ピークと簡易化学試験を組み合わせてプラスチックを体系的に鑑別する手法を新たに構築。官能基吸収(例えば炭素yl基のν(C=O)位置)や添加剤の有無(可塑剤・充填剤など)に注目し、未知試料の樹脂種類を判定する手順を示しています。
高分子 FTIR 赤外スペクトル解析
-
Microstructural Interpretation of Influences of Molecular Weight on the Tensile Properties of HDPE Solids Using Rheo-Raman Spectroscopy
HDPEについて、重量平均分子量の効果を評価している。高Mw成分の添加でタイ分子密度が増え、降伏以降の応力伝達ネットワークが強化されることを確認。応力下でC–C伸縮振動のラマンバンドが低波数側へシフトしピーク幅が拡大する現象を観測し、これはタイ分子に荷重が集中するためと解釈されています。
高分子 ラマン HDPE レオメーター
-
Rheo-Raman Spectroscopic Study on Uniaxial Deformation Behavior of High-Density Polyethylene Solids with Various Molecular Weight Distributions
高密度ポリエチレン(HDPE)の分子量分布が機械応答に与える影響をラマン分光その場観察で解析した事例です。分散の大きい試料ではタイ分子が増加し、ネック形成後のひずみ硬化が顕著に表れています。結晶鎖の配向およびトランス鎖の伸長も分散が大きいほど増加し、タイ分子ネットワークがひずみ硬化に寄与することが示されています。
高分子 ラマン HDPE レオメーター
-
In Situ Infrared Spectroscopy Reveals Persistent Alkalinity near Electrode Surfaces during CO2 Electroreduction
Cu電極上でのCO₂電気化学還元中に表面増強赤外吸収分光(SEIRAS)を適用し、その場観察しています。pHを計測し、その結果、リン酸緩衝液を用いても反応中の電極表面近傍ではバルク溶液よりpHが最大5高く(より塩基性)保たれ、-1 V vs RHE付近で局所的な強塩基性環境が持続することが示されています。緩衝能を高めてもH₂発生が増加してバッファー作用が狭い電位範囲で破綻し、電極表面近傍での濃度勾配とアルカリ性環境がCO₂還元反応に与える影響が示唆されました。
FTIR SEIRAS オペランド 電池
-
CO2 Methanation over Nickel Catalysts: Support Effects Investigated through Specific Activity and Operando IR Spectroscopy Measurements
複数の酸化物担体上のNi触媒を比較した結果、担体によるNi分散度や塩基性の違いが活性に影響することが明らかにしています。また、オペランドFTIRにより反応中に各触媒表面で生成する吸着中間種(ギ酸塩など)を観察し、その量に差があることが示されています。適度な塩基性と金属–担体相互作用を備えた触媒が高活性を示し、CO₂メタン化はギ酸塩経路で進行する可能性が示されました。
FTIR メタネーション 触媒